震災後、役場職員あるいは市役所職員に鬱病ならび抑うつ傾向を示す公務員が増加したと報じられた。それはそうだろう。すぐに被災者の細々とした問題を解決できる訳でもなく、一人もしくは一家族の抱える問題は多岐に渡る。聞くだけでも精一杯だろう。すぐに解決できなくて当たり前なのに朝から夕方までその声を聞くというのは大変なことで、誰もが鬱になりえる。
またある小学校が被災して町内の別の小学校に間借りしたが、被災した小学校の生徒に肥満児童が多く出現した。もちろん物資にお菓子が多かったとの意見もあるが、ストレス性過食による肥満だと考えた。受け入れた小学校側にも肥満児童は増加したが、それは相当上回った。特に学年が上なほど肥満児童の割合が多かった。小学校高学年ほど神経が繊細でストレスを感じやすいのだと思う。
震災の時に小学生で今、中学生や高校生になった児童がどのような精神状態にあるのかがよく判らない。特に転校を余儀なくされたり、親が亡くなったり、あるいは親の収入減少などが原因となり、そのことがその児童の成長に悪い影響を及ばなさければ良いなと案じている。そういえば20歳ぐらいで結婚する若者が増えたのも震災が原因かもしれない。
ところで避難所には精神疾患を患って精神科に通院中の患者もいたが、薬が切れて不穏状態を呈する者もいた。彼らは精神科に通院していることを公にしていないことが普通なので、その対応も重要であろう。特に統合失調症で精神科に通院している患者については自治体で、ある程度把握しておく必要がある。中でも独居の統合失調症の患者については是非そうしてもらいたい。
双極性障害(躁うつ病)の患者の何人かは躁転した。これは私も同様であったが被災直後というのは「よし頑張ろう」という気持ちになった。ところが3か月を過ぎると鬱転した。私の知り合いは双極性障害で鬱に転じた途端に自殺した。私も鬱の傾向が出現した。もともと鬱病で通院している患者が元気に頑張っているなら、必ず訪れる鬱転のタイミングを見落としてはいけない。
また家族を亡くした人たちについては、話をできないほどの悲しみに包まれており、医者ですら声をかけることができない。不眠、食欲不振など多くの患者を診たが、家族を失った患者の顔をみるのは実に辛い。同時に生き残った人間は頑張らなければと思ったのであるが、今の私の見解では頑張らない方が良いという結論だ。頑張りすぎると燃え尽きる。